バカ犬の独り言 第二話 掛かり付けの動物病院

この前、狂犬病の予防接種に行ってきました。と言っても、6月末日(2015年)のことで、約1ヶ月も前のことです。全く、うちのバカ飼い主も横着者です。この時期の予防接種と言えば、狂犬病とフィラリア症で、わたしたち犬にとっては、大事なことです。

 

多分、多くの真っ当な飼い主さんは、5月末までに受けてしまうでしょう。けれども、うちのバカ飼い主は、気分屋なので、ある年は4月に狂犬病、5月にフィラリア症対策をしたり、またある年は5月にまとめてしたり、もしくは、今年と同じく、6月にしたり、実にいい加減です。

 

「金がない」

 

なんて、言い訳にしていますが、ただのいい加減な飼い主に変わりはありません。けれども、まあ、受けないよりは、遅くても受けた方が良いですし、なにより狂犬病予防接種については義務ですし、うちの地域では、6月末までに受けるようになっています。まっ、バカ飼い主でも、ギリギリ合格かな、とも思っています。

 

けれど、今年の予防接種は、わたしにとって結構楽しめました。注射や薬が好きだとか、そういうことではありません。前の家(マンション)から通院している病院まで、散歩ができたからです。今は、バカ飼い主の母親、わたしにとっては、おばあちゃんになりますが、彼女も一緒に暮らしています。さいたま市桜区になるので、浦和区にある掛かり付けの動物病院は、遠くなってしまいました。

 

前なら歩いて5分程度で行けたので、とてもラクでした。犬の中には、病院が嫌いな子もいるようですが、わたしは違います。待合室がキレイで、ときどき他の犬も来るし、なにより、わたしのことを褒めてくれます。今回も、動物病院についたら、早速声を掛けてくれました。

 

いしい動物病院

 

「あらあ、ヒロちゃん、また来たのねえ。いつもおりこうねえ」

 

受付もしている主治医の奥さんです。ふとバカ飼い主の顔を見上げると、ニタニタしていました。わたしと二人だけになると、バカ犬、何やってんだバカ、なんて言ってきます。もしわたしがバカだったら、しつけをしている飼い主がバカだからであり、引いては、やっぱりバカ飼い主となります。本当に、どうしようもないですね。

 

ともあれ、掛かり付けの動物病院で奥さんから声を掛けられた後、すぐに診察室に入りました。バカ飼い主に持ち上げられ、診察台の上に乗せられました。まずは狂犬病の注射を打たれました。たぶん後ろ足に針を刺したと思います。少しチクッとしましたが、痛くはありませんでした。あれ、もう終わり?、と思っていると、バカ飼い主と主治医が、いつものようにフィラリアの薬を毎月一粒ずつもらうことで、約束していました。けれども、この時、バカ飼い主と主治医のやり取りが面白かったです。

 

「今年のフィラリアは、11月までですか? それとも、12月までですか?」
「11月でいいよ。まあ、ほんとは5月からがいいんだけどね」

 

バカ飼い主を見たら、ニコニコしながらも、罰が悪そうな感じでした。今時、犬をフィラリアで死なせたら飼い主がバカだ、なんて、おばあちゃんに自慢気に言っていましたが、こういう姿を見ると、お前が生意気言えるか!!、と思います。

 

いずれにせよ、毎年恒例の「お仕事」が終わり、バカ飼い主と一緒に帰ることになりました。前にも言いましたが、今の家は、桜区にあります。掛かり付けの動物病院は浦和区にあり、それなりの距離がありますが、意外にも、1時間半あれば、歩くことができます。けれども、バカ飼い主は、体力がないんでしょうね。行きは揚々、帰りは消沈。休み休み帰ることになりました。

 



 

まずは、北浦和公園に立ち寄って、バカ飼い主がアイスとジュースを買いました。日頃、金がない、というのが口癖で、散歩以外、めったに出掛けることはありません。在宅仕事だから、なんて言っていますが、実際人付き合いが悪く、遊び方も知らないようです。そういうことも関係しているのでしょう。約2年前まで暮らしていた北浦和に久しぶりに来たので、慣れ親しんだところを見たかったようです。

 

最初に噴水広場に行きました。土曜日の夕方ということもあって、結構人がいました。噴水広場と言えば、わたしが落ちた場所でもあります。引き取られたばかりの頃、夜に北浦和公園まで、散歩に来ました。気分が向いたのか、バカ飼い主が、突然、噴水広場の近くで、リードを外しました。やったあ、と思って、はしゃぎながら噴水へ向かって走って行ったら、足を滑らして、そのまま噴水の中に落ちました。

 

急いで上がって、ブルブルブルッとしたら、ベンチに座っていたカップルが驚いた顔で跳び上がりました。バカ飼い主は、腹を抱えて笑い、カップルの男性から注意されていました。はしゃいだわたしも間抜けかもしれませんが、でもねえ、犬ですしねえ、野生の血が騒ぐ、日本育ちの柴犬ですしねえ、仕方ないですよねえ。それなのに、バカ飼い主は、独りで笑い転げ、独りで楽しそうでした。バカだなお前、なんて言っていましたが、人の事言えるか!!、と思ったのは、当然のことですよね。

 

北浦和公園_噴水

 

この次に、庭園造のような池へ向かいました。ここで、バカ飼い主が自動販売機でジュースとアイスを買い、池の側のベンチに腰を下ろしました。ペロペロペロペロ、ゴクゴクゴクゴク。わたしが側から見ていると、あとでやるよ、と言われました。どうせ残り物でしょ、と思っていたら、案の定アイスの残り滓でした。まあ、いつものことだから仕方ないですけど、フウハアフウハア言って、相当参っていたみたいです。運動不足もここに極まれり、ということでしょう。

 

北浦和公園_池

 

こうして、北浦和公園を後にし、ずんずん西へ向かいました。常盤小学校の裏を抜け、県道57号線の歩道に出ました。それから、住宅街を通り、六間道路を過ぎ、埼京線の線路沿いに行きました。フットサル場や病院などの側を通り、中浦和駅の裏手に着きました。実は、この辺りまで、散歩に来たことがあります。中浦和駅から散歩道を西へ向かうと、田島氷川神社があり、春になると、桜が満開になります。今年もバカ飼い主と行き、田島氷川神社側の公園が、夜桜でいっぱいになっていました。

 

勝手知ったるテリトリー。

 

約2年前まで北浦和近辺で暮らしていたのに、すでに気持ちがこうなっています。人も都合の良い生き物なら、わたしのような犬もまた、同じかもしれませんね(笑)。 自宅が近くなったら、クンクンクンクン、自分でも勢いが増したことを覚えています。

 

けれども、バカ飼い主は、そのまままっすぐには帰ってくれませんでした。中浦和駅から散歩道を進み、新大宮バイパスの歩道橋を越え、西浦和霊園の裏手に出ました。いつもの散歩道で、やったあ、もうすぐ家だあ、と思いましたが、新開通りを越え、わたしが曲がろうとしたら、そのまままっすぐ行くように促されました。そちらも、散歩することがあり、わたしもよく知っています。しかし、この日のように長く歩いた時は、やっぱり、犬だって、すぐに帰りたくなります。そうは思っても、飼い主がバカだと、思いも通じないようです。

 

散歩道をまっすぐ歩くと、クリーンセンター西堀に行き当たります。最近できたゴミ処理場で、バカ飼い主が子供の頃はなかったようです。荒川の土手になるので、バカ飼い主が中学生の頃は、荒れた湿地帯だったようです。その頃飼っていた犬と良く遊びに来ていたようで、変わってしまった風景に少し寂しさを感じることもあるようです。バカにはバカなりの心もあるようです。

 

そんなクリーンセンター西堀の横には、真新しい公園もあります。バカ飼い主は、余程疲れたのか、先の散歩道の途中で自動販売機のジュースを買い、この公園のベンチに座って、休むことにしました。炭酸だからお前にはやらないぞ、なんて言っていましたが、端から貰う気はありませんでした。早く帰りたいなあ、と思いながら、じっと待っていました。

 

ベンチ

 

すると、バカ飼い主が空の向こうに目をやりました。そうして、リードを引き、わたしに見せようとしました。ゴミ処理場が建つような環境とはいえ、都心まで電車で60分圏内のところです。埼玉都民が暮らす地域でもあり、首都圏でもあります。けれども、そんなところでも、ちょっと目を留めたくなるような光景に出会えます。ふうん、こんなこともあるんだ、と思いながら、わたしも、そして、バカ飼い主も、少し見とれてしまいました。一体オレンジ色の向こうには、何があるんだろう、そんなことも感じてしまいました。

 

ベンチ

 

少ししてから、ようやく自宅へ帰ることになりました。クリーンセンターの公園からは、歩いて数分も掛かりません。勝手知ったるテリトリーです。クンクンクンクンしながら家に着くと、大好きなおばあちゃんが迎えてくれました。「毎年のお仕事」をした一日でしたが、ちょっとなんだか最後に、いいもの見れたかな、なんて思ってます。もちろん、その日は、バカ飼い主がすぐ側にいながらも、ぐうすか眠ってしまいました。

 

わたしは、ヒロと呼ばれるメス犬です。日本育ちの柴犬です。

 

ベンチ

 

参考 : 飼い主の義務

 

- 続く -

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